健康診断、大腸がん検診などで検便を受けたことがある患者様は多いと思いますが、この検査にはどのような意義があるのでしょうか。

検便は採取した大便を分析する検査のことであり、便潜血反応、含まれている菌やウイルスの有無、寄生虫の有無などを調べることが出来ます。

健康診断、大腸がん検診などで受ける検便は、一般的には便潜血反応を調べています。

便潜血反応を調べることで何が分かるのでしょうか。

また、便潜血陽性の場合の大腸がんの確率、次に受けるべき精密検査が何かが気になりますね。

ここでは、便潜血反応についてまとめてみました。

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便潜血反応とは

便潜血反応とは、大便の中に含まれている微量な血液の有無を調べる検査です。

微量の血液しか便に含まれておらず、目で見ても血液が便に混ざっていることが分からないような場合でも、確認することが出来ます。

便潜血反応は以前、”化学法”という方法が用いられていましたが、異常がないのに異常と判定される場合が多く、問題とされていました。

今では、”免疫法”という方法が主流になっています。

通常は、異常を見逃さないようにするために合計2回( 1日1回で2日間 )、大便を採取して調べます。

便潜血反応が陽性の場合

便潜血反応が陽性の場合、どのような病気が考えられるでしょうか。

便潜血反応は、消化管から出てきた血液が便に混ざると異常として検出されます。

消化管は上部消化管(食道、胃、十二指腸)下部消化管(空腸、回腸、大腸)に分かれます。

現在、主流となっている免疫法による便潜血反応は、基本的に下部消化管(空腸、回腸、大腸)からの出血を検出します。

そのため、便潜血陽性(免疫法)の場合、下部消化管(空腸、回腸、大腸)から出血を起こす病気の可能性があります。

便潜血反応が陽性の場合、下部消化管(空腸、回腸、大腸)から出血を起こす病気の可能性があります。

下部消化管の中でも、空腸、回腸の病気は珍しいため、まず大腸から出血を起こす病気の可能性を疑います。

大腸から出血を起こす病気の中で、心配なのは大腸がんですね。

大腸がんだけではなく、他にも色々な病気が隠れている可能性があります。

大腸がんなどの病気がないかどうかを調べるため、大腸の中を詳しく調べる必要があり、通常は大腸カメラが行われます。

覚えておきたいこと

便潜血陽性の場合、大腸カメラの検討が必要。

大腸カメラでは大腸だけではなく、小腸の一部(回腸の末端)を観察することが出来ます。

まれですが、回腸の末端に病変が発見されることがあります。

私は以前、大腸カメラを行っている際に、回腸の末端に大きなポリープ(約 2 cm)を発見し、内視鏡治療を行うという貴重な経験をさせていただいたことがあります。

貴重な経験だったため論文としてまとめ、日本消化器内視鏡学会雑誌に投稿したところ、採用していただき、2019年に症例報告の形式で発表しました。

日本消化器内視鏡学会雑誌に掲載される症例報告は、基本的に稀な症例が中心です。

この症例報告のように、回腸末端に腫瘍が発見されることは、稀であることが分かりますね。

大腸カメラで観察可能な部位については、以下の記事でまとめています。

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2回の便潜血反応のうち、1回だけが陽性の場合

便潜血反応は先ほど述べた通り、2回調べるのが普通です。

2回のうち、1回だけが陽性の場合はどのように考えれば良いでしょうか。

実は、便潜血反応は全ての異常を検出できるわけではありません。

覚えておきたいこと

早期の大腸がんのある患者様で、便潜血反応が陽性になるのは、60%程度だけです。

進行した大腸がんのある患者様でも、便潜血反応が陽性になるのは、90%程度です。

出典:臨消内科2008;23:159-165

大腸がんがあっても、便潜血反応で陽性にならない可能性があるのです。

そのため、便潜血反応が1回でも陽性の場合は、大腸がんなどが存在している可能性があり、大腸カメラの検討が必要になります。

覚えておきたいこと

便潜血反応が2回のうち1回でも陽性なら、大腸カメラの検討が必要

便潜血反応が陰性でも、大腸がんがないとは言えません

便潜血反応は主に大腸からの出血を検出する検査ですが、大腸ポリープや大腸がんがあっても小さいうちは出血しにくいため、便潜血反応が陽性にはなりにくいと考えられています。

便潜血反応が陰性であっても、大腸ポリープや大腸がんが隠れている可能性はあり得ます。

小さな大腸ポリープや、発生したばかりの大腸がんがあっても自覚症状はないことが多いです。

そのため、自覚症状がないまま病態が進行してしまうリスクがあります。

大腸がんは、初期ではほとんど自覚症状がありません。時間の経過とともに大きくなり、進行してから血便などの症状を起こすようになります。

このようなリスクを避けるために、大腸カメラが有効です。

大腸カメラを受けることで、大腸ポリープや大腸がんを初期の段階で発見できます。

10 mm程度までの大きさであれば、ポリープの形状などにもよりますが、日帰りで切除出来ることが多くなってきています。

10 mm程度までの小さな大腸ポリープは、日帰りで切除出来ることが多くなってきています。施設によっては、ポリープの切除は全て入院で行われている場合もあるため、担当される医師に確認されると良いでしょう。

大腸ポリープや大腸がんの原因、注意すべき点などについて、まとめた記事があります。気になる方は、以下の記事をご参照下さい。

便潜血反応が陽性の場合、約3%にがんが発見されます

便潜血反応は、受けた人の約6%が陽性となり、さらに陽性になった人の約3%にがんが発見されると言われています。

出典: 大腸がん検診マニュアル (日本消化器がん検診学会・大腸がん検診制度管理委員会編)

便潜血反応が陽性の場合は、大腸カメラを受けるようにしましょう。

早期に発見出来れば、現在ではESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という大腸カメラを用いた治療法で、おなかを切らなくても大腸がんを治すことが出来るようになっています。

なお、私が勤務している湘南藤沢徳洲会病院・内視鏡内科では、大腸がんに対するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を多数行っています。

2019年の実績で、大腸ESDは年間で約90件行っています。

食道ESD、胃ESD、十二指腸ESDも含めますと年間190件以上であり、神奈川県の湘南エリアではトップクラスの件数になっています。

ESDに関しては、全ての症例を私が担当させていただいております。

治療を希望される患者様は、下記の問い合わせボタンからご連絡下さい。

まとめ

便潜血反応が陽性の場合

  • 約3%にがんが発見されます。
  • 精密検査として大腸カメラの検討が必要です。

便潜血陽性になる確率

  • 早期の大腸がん  約60%
  • 進行した大腸がん 約90%

大腸がんが発見されても、早期の段階であればESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療で、おなかを切らなくても治すことが出来ます。

以下は、患者様向けの大腸がんに関する書籍です。

大腸がんの治療法が分かりやすく書かれています。

大腸がんの治療指針(ガイドライン)が、患者様向けに分かりやすく書かれています。

大腸がんに関する情報を、下記の記事でまとめています。

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