2019年9月5日に開催された、第25回神奈川県消化器内視鏡懇談会に参加してきました。

今回はシンポジウムで、「浸水下内視鏡治療の実際」について講演をさせていただきました。

今回は約20分の講演を行いました。

スポンサーリンク

内視鏡治療とは

内視鏡治療とは、胃カメラや大腸カメラを利用した治療のことです。

昔はおなかを切らなければ治すことが出来なかった大きながんも、最近は胃カメラや大腸カメラから出した電気メスを使って切り取ることが出来るようになりました。

そのため、おなかを切らずにがんを治すことが出来るようになってきました。

外科手術では、臓器の一部あるいは全部を切除します。

一方、内視鏡治療では臓器がそのまま残るため、基本的に後遺症がないのが大きな利点です。

患者様には大変好評で、内視鏡治療の件数が非常に増えて来ています。

厚生労働省が発表したNDBオープンデータによると、2016年、胃がんの内視鏡治療(ESDなど)の件数が、外科手術の件数を超えたということです。

浸水下内視鏡治療とは

食道・胃・十二指腸・大腸の腫瘍(がん、腺腫など)の内視鏡治療は、ガスで膨らませた腸管内で行われて来ました。

最近、ガスの代わりに、生理食塩水などで膨らませた腸管の中で内視鏡治療を行うことで、今までになかった利点があることが分かってきました。

この新しい方法を”浸水下内視鏡治療”と呼んでいます。

浸水下内視鏡治療としては、以下の2つが代表的です。

  • Underwater ESD(浸水下で行う内視鏡的粘膜下層剥離術)
  • Underwater EMR(浸水下で行う内視鏡的粘膜切除術)

私は、2018年に大腸腫瘍に対するUnderwater ESD、十二指腸腫瘍に対するUnderwater ESDに関する英語論文を発表しております。

そのため、今回の講演では、特にUnderwater ESD(浸水下で行う内視鏡的粘膜下層剥離術)を中心として話をさせていただきました。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の基本事項に関しては、以下の記事で詳しく説明しておりますので、よろしければご覧下さい。

Underwater ESDの利点を生かすことで、通常のESDでは治療が困難な症例などに対応出来る場合があります。

利点には色々あるのですが、ここでは1つだけ例を挙げて説明します。

生理食塩水などの液体で拡張させた腸管は、ガスで拡張させた腸管と比べると液体は拡散しにくいため、限局的な腸管拡張が得られます。

術野などのスペースを確保したい場所を中心とした限局的な腸管の拡張が得られることで、胃カメラや大腸カメラの操作が安定しやすくなります。

一方、通常のESDでは、送気したガスが拡散し、術野以外の他の場所も徐々に拡張していくため、胃カメラや大腸カメラの操作が難しくなる場合があります。

胃カメラや大腸カメラの操作が難しくなると、治療に時間がかかったり、穿孔(せんこう:胃腸の壁に穴があくこと)などのリスクが高くなります。

通常のESD。ガスで膨らませた腸管の中でESDを行います。胃の中が送気により徐々に拡張し、胃カメラがたわみやすく、操作しにくい状態になります。

Underwater ESD。十二指腸の限局的な拡張が得られ、胃の中が拡張しにくいため、胃カメラがたわみにくく、操作しやすい状態を保ちやすくなります。

ただ、良いことばかりではなく、浸水下ならではの特有の問題点があります。

また、浸水下では送気下とは視野の範囲が違ってきます。

使いこなすためには、色々なことを把握しておく必要があります。

今回の講演では、これまで拙著で述べてきたことに加え、新しく気付いた利点や、問題点への対処法も述べて参りました。

今後も検討を続けていきたいと考えております。

スポンサーリンク
おすすめの記事