食道癌のまとめ記事

食道癌は、胃癌、大腸癌に比べると数は少ないとされています。

しかし、病態の進行が比較的早く、転移しやすい厄介な病気です。

2013年の統計の結果では、食道癌は5年生存率 41.8%であり、決して良い数値とは言えません。

胃癌の5年生存率が62.1%、大腸癌の5年生存率が63.2%であることに比べると、食道癌の5年生存率(41.8%)は低く、恐い病気であることがお分かりいただけると思います。

食道癌を治すために一番重要なことは、初期の段階で発見することです。

初期の段階(ステージⅠ)であれば、5年生存率は67.9%であり、食道癌全体の5年生存率 41.8%に比べ、良くなっていることが分かります。

また、初期の段階であれば、外科手術ではなく、体に負担の少ない内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で治療することが出来ます。

この記事では、食道癌に関する色々な情報をまとめています。

食道癌の初期症状とは

食道癌は初期の状態では自覚症状が出ないことが多いと言われています。

熱いもの、塩分の高いものや、すっぱいものを食べた際に、しみるような症状を感じる方もいらっしゃいますが、あまり多くはありません。

初期の段階では自覚症状が乏しいため、気が付かない間に病態が進行していきます。

病態が進行した食道癌を、”進行食道癌”と呼びます。

食道癌は初期の段階では、胃カメラで見てもほとんど分からないような見た目をしています。

しかし、進行食道癌の状態になると、一目で分かるほどの大きさになります。

初期の段階の食道癌(黄色の矢印)を胃カメラで観察。少し赤みがありますが、非常に分かりにくいです。
病態が進行した食道癌(黄色の矢印)を胃カメラで観察。一目で分かるような形、大きさです。これくらいの大きさになると、ご飯が通りにくくなり、つかえ感などの症状が出ます。

食道は細い管のような構造をしており内側は狭くなっています。

食道癌が進行して大きくなると、食道がさらに狭くなります。

そうなると、飲み込んだ食べ物が食道を通過しにくくなり、つかえ感飲み込みにくさなどの症状が出てきます。

さらにひどくなると、食べても吐くといった症状が出てきます。

食事を食べられないため、体重が減ります

食道の近くには声を調節している神経がありますが、この神経が食道癌によって圧迫されると、声のかすれ声のかれ声を出しにくいなどの症状が出ることがあります。

食道癌が周囲に浸潤していくと、胸や背中に痛みを感じることもあります。

食道癌になりやすい人とは

食道癌には、組織の種類によって食道扁平上皮癌、食道腺癌などがありますが、日本人に発生する食道癌はほとんどが食道扁平上皮癌です。

そのため、ここでは特に断りがない限り、食道癌は食道扁平上皮癌を指すものとして話を進めていきます。

食道癌になりやすい人として、たばこを吸う人、お酒をたくさん飲む人が挙げられます。

特に注意が必要なのが、お酒を飲むと顔や体が赤くなる人です。お酒を飲むと顔や体が赤くなる反応を「フラッシング反応」と呼びます。フラッシング反応は、お酒を分解する酵素の働きが悪いことが原因と言われています。

フラッシング反応がある人は食道癌のリスクが高いと言われています。

「コップ1杯(約180 ml)のビールを飲むとすぐに顔が赤くなりますか?」という質問に当てはまる方は、食道癌に注意が必要です。

食道癌を初期の段階で発見するために

食道癌を発見するための検査としては、胃カメラとバリウムがあります。

お勧めなのは、断然、胃カメラです。

胃カメラは胃だけではなく、食道や十二指腸を見ることが出来ます。

異常があれば、その場で生検(組織を採取)して、病理検査(顕微鏡での分析)を追加することも出来ます。

バリウムでも食道を見ることが出来ますが、生検(組織の採取)をして診断を確定することが出来ません。また、細かい病変を発見することが難しい場合もあります。

そのため、バリウムで異常が出た場合は、胃カメラでの精密検査が必要になる場合が多いです。

胃カメラは苦しい、つらいなどのイメージをお持ちの方も多いとは思います。

しかし、鎮静剤の使用、鼻から入れる細い胃カメラの使用などで、昔よりも楽に受けられる検査になってきています。

病気の早期発見という意味では、1年に1回を目安に胃カメラを受けられることをお勧めいたします。

食道癌の精密検査

食道癌が発見されたら、どのような治療を行うかを検討していきます。

治療の方法を決めるためには、癌の根の深さ、転移があるかどうかなどを、精密検査をして調べる必要があります。

そのような検査としては、CT、PET、超音波内視鏡などがあります。

CT

CTとは、“Computed Tomography (コンピューター断層撮影法)”の略語で、体の断面図を撮影することが出来ます。

mm単位の間隔で細かく断面図をとることが出来るため、レントゲンに比べ、詳しく見ることが出来ます。

そのため、癌の根の深さや別の臓器、リンパ節への転移がないかを調べることが出来ます。

PET

放射性の薬剤を投与して写真を撮る検査で、悪性・良性の鑑別、癌の転移の有無を調べるために行われます。

ただ、初期の段階の癌の場合は、反応が見られないことがあります。

超音波内視鏡

胃カメラの先端から超音波を出すことで、食道癌の根の深さや、食道癌の転移などを詳しく調べることが出来ます。

食道癌の治療

食道癌の治療には、内視鏡的切除、外科手術、放射線治療、抗癌剤(化学療法)、緩和ケアがあります。

食道癌の進行具合(癌の根の深さ、転移の有無など)、患者様の年齢・元気度・ご希望などから総合的に治療方針を決定します。

内視鏡的切除

初期の食道癌の場合には、内視鏡的切除の適応になります。

これは、胃カメラの先端から出した処置具で食道癌を切除する治療法です。

胸やおなかを切らなくても済むため、食道癌の治療としては体への負担が軽い治療です。

内視鏡的切除には色々な方法がありますが、最近は、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が選択されることが多いです。

私は、このESDを専門としています。

ESDの適応となる病変は、初期の段階の食道癌に限られます。

しかし、最近は胃カメラの診断能の向上により、ESDで治療可能な段階で発見される患者様が増えています。

切除後の病理検査により、癌が取り切れているかどうか、転移の可能性などが推測できます。

癌が取り切れており、転移の可能性がほとんどないと判断できる場合は、内視鏡的切除だけで済みます。

癌が取り切れていなかったり、転移が起こる可能性がある場合は、追加で外科手術、放射線治療、化学療法を行うことがあります。

外科手術(開腹/開胸手術、腹腔鏡下/胸腔鏡下手術、ロボット支援下手術)

外科手術は、病態が進行した食道癌の標準的な治療法です。

食道癌の外科手術では、胸部からの手術と腹部からの手術のどちらも必要となることが多いため、体への負担が大きい手術になります。

そのため、体力的な問題で外科手術に耐えられないと予想される場合は、抗癌剤、放射線治療が選択されます。

また、抗癌剤を先に行ってから外科手術を行うなど、他の治療法を組み合わせる場合があります。

放射線治療

放射線を癌に当てることで、癌を小さくする治療です。

放射線治療と抗癌剤を組み合わせるとより効果的と言われています。

抗癌剤(化学療法)

基本的に、外科治療や放射線治療と組み合わせて実施されます。

外科手術や放射線治療が困難な場合は、抗癌剤単独による治療が行われる場合もあります。

緩和ケア

身体的な苦痛や気持ちの辛さを和らげるためのサポートを行う治療です。

緩和ケアは、他の治療法と並行して行ったり、他の治療法の適応がない場合などに行われたりします。

今後増えるかもしれない、食道腺癌(せんがん)とは

食道癌の種類

食道癌には、組織の種類によって、食道扁平上皮癌、食道腺癌などがあります。

日本人に発生する食道癌は、ほとんどが食道扁平上皮癌です。

欧米に多いとされる食道腺癌は、日本人にはあまり出来ません。

しかし、日本では今後、食道腺癌が増える可能性があります。

胃酸の逆流で食道腺癌が増える?

胸やけや口の中にすっぱいものが上がってくるなどの症状があれば、胃食道逆流症(GERD)の可能性があります。

現在、日本人において胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease: GERD)が増えて来ています。

逆流性食道炎の方がなじみ深いかもしれませんが、これは胃食道逆流症の一つです。

胃食道逆流症は胃液が食道に逆流することで、胸やけなどの症状を起こします。

また、胃液の逆流の影響で、食道の表面が胃の粘膜と同じ構造に置き換わり、バレット食道と呼ばれる状態になることがあります。

バレット食道は、食道腺癌のリスクになると言われています。ただ、日本では食道腺癌が稀ということもあり、分かっていないことが多いです。

バレット食道と診断されたとしても、現時点では定期的に胃カメラを受け、様子見で良いと考えられます。

実際、食道癌診療ガイドライン2017年版では、バレット食道の治療について否定的です。

・バレット食道をサーベイランス(監視)することを弱く推奨する。

・バレット食道そのものに対して発癌予防目的に内視鏡治療は行わないことを強く推奨する。

食道癌診療ガイドライン2017年版

まとめ

食道癌は、胃癌、大腸癌に比べると数は少ないですが、進行が比較的早く、転移しやすい厄介な病気です。

日本人においては、たばこ、お酒がリスクとなる食道扁平上皮癌と呼ばれるタイプが多いため、たばこ、お酒が好きな方は注意が必要です。

特に、お酒を飲むと赤くなりやすい人は食道癌のリスクが高いと言われているため、定期的に胃カメラを受けることをお勧めいたします。

定期的に胃カメラを受けることで、食道癌を初期の段階で発見することが出来ます。

初期の段階で発見出来れば、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で食道癌を治せる可能性が高くなります。

ESDは外科手術と違い、胸やおなかを切らなくても良いため、体への負担が軽い治療法です。

詳しくは以下をご覧下さい。

湘南藤沢徳洲会病院・内視鏡内科では、ESDを多数、行っております。

ESDに関しては、最初から最後まで、私が担当させていただいております。

難易度が高いとされる食道全周に及ぶ大きな食道癌のESDも行っていますので、治療をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

食道全周の癌に対するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の実際

①食道を薬液で染色しました。黄色っぽい部分が食道癌です。食道全体に広がっています。
②ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で食道癌を含め、食道の粘膜を全周性に切除しました。
③切除した病変を体の外に取り出しました。展開した後、ピンで伸ばして固定し、薬液で染色しています。
黄色っぽい部分が食道癌です。非常に大きな食道癌ですが、顕微鏡での判定(病理検査)で、完全に切除されており治癒と判定されました。
④ESDから数か月後の胃カメラの写真です。ESDで切除した部分は粘膜で覆われており、元通りになっています。

食道癌の内視鏡治療に関するお問い合わせ

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