大腸カメラは痛いというイメージが強く、受けるのをためらわれている患者様は多いのではないでしょうか。実際、“大腸カメラ”で検索すると、インターネット上には、「大腸カメラは痛くて大変だった」という口コミが多く見受けられます。

私は専門医として、多くの大腸カメラを行ってきました。また、常勤先、非常勤先で色々な医師の大腸カメラのやり方を見てきました。その中で感じるのは、苦痛がない大腸カメラを患者様に提供するのは簡単なことではない、ということです。

苦痛がない大腸カメラの方法は、大腸カメラに関わる医師にとって、永遠のテーマとさえ言えます。実際、大腸カメラの挿入法に関する書籍は多数ありますし、学会でも定期的に大腸カメラの挿入法に関するセッションが開催されています。

ここでは、大腸カメラにおける痛みの原因、痛みに対する対処法をお伝えしていきます。

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大腸カメラで分かること

大腸カメラを受けることで、大腸にポリープや癌(がん)、腸炎などの病気がないかが分かります。

例えば、
・下痢が続いていたのは、腸炎が原因だった
・血便が出るのは、大腸がんが原因だった
などと診断することが出来ます。

大腸ポリープが見つかった場合、組織を採取したり(生検)、切除することが出来ます。

最近では、小さな大腸ポリープは日帰りで切除出来るようになってきています。

大腸カメラによりポリープ、癌(がん)などを発見することが出来ます。小さなポリープは、日帰りで切除可能になってきています。

大腸の構造

大腸は、下図のように長い管状の構造をしており、部位によって、直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸に分かれます。この内、S状結腸と横行結腸はブラブラと動く構造となっており、大腸カメラの挿入を困難にする原因となっています。

大腸の構造。部位によって、細かく名称が付けられています。S状結腸と横行結腸はブラブラと動く構造となっており、大腸カメラの挿入の際に伸びやすく、おなかの痛みの原因になります。

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大腸カメラで痛みが出る理由その①:腸管が伸展する

S状結腸、横行結腸は、固定されておらず、ブラブラになっているため、大腸カメラの進め方に注意しないと、腸管が伸びてしまい、おなかの痛みの原因となります。

下のイラストのように、腸管を伸ばさないように大腸カメラを入れることが出来れば、おなかの痛みは出ないことがほとんどですが、それには高い技術が必要です。

腸管を伸ばさないように大腸カメラを挿入することが出来れば、おなかの痛みはほとんど起こりません。

大腸カメラで痛みが出る理由その②:ガスで腸管がパンパンになる

大腸カメラの先端には穴が開いており、ここからガスを出すことが出来ます。

大腸カメラは先端に穴が開いており、ガスを出したり、ポリープを切除するための器具を出すことが出来ます。ガスを入れすぎると、おなかが張って、おなかの痛みの原因になります。

大腸カメラを進めていく際、大腸がペシャンコだと、レンズに大腸の粘膜が接触し、視野が取りにくくなります。そのため、必要に応じて、大腸カメラからガスを出して、腸管を膨らませます。

ガスを入れすぎると、腸管が膨らみすぎて、おなかの張りが強くなり、痛みの原因になります。また、腸管が膨らみすぎると、大腸カメラの操作が難しくなり、時間がかかる原因になったり、腸管を伸ばしやすくなることで痛みの原因になります。

一方、ガスを入れないと視野がとりにくく、大腸カメラの挿入が難しくなります。

大腸カメラの痛みの対処法

腸管を伸展させない大腸カメラの挿入法を用いる

何の工夫もせず、大腸カメラを挿入すると、腸管は簡単に伸びてしまい、痛みの原因となってしまいます。

そのため、腸管を伸ばさないようにするための挿入法が考案されてきました。代表的なものとして、軸保持短縮法、浸水法が挙げられます。

私は無送気での軸保持短縮法を基本として、患者様の状態によって、浸水法も使用しながら、大腸カメラを行っております。

大腸カメラを痛みなく挿入するのは簡単なことではなく、技術の習得には時間がかかります。医師によって差が出やすいところです。

大腸カメラを痛みなく挿入するための方法として、軸保持短縮法、浸水法などがあります。

空気の代わりに、炭酸ガス(二酸化炭素)を用いる

大腸カメラの際に使用できるガスとして、空気、炭酸ガスがあります。

以前は空気が用いられておりましたが、おなかの張りが強くなりやすいという問題がありました。

現在では、空気の代わりに炭酸ガスが用いられるようになってきています。炭酸ガスは吸収されやすいため、おなかの張りを和らげることが出来ます。

薬(鎮静剤、鎮痛剤)を用いる

鎮静剤を用いることで、意識がぼんやりとした状態となり、苦痛を感じにくくなります。

また、鎮痛剤を用いることで、痛みを和らげることが出来ます。

鎮静剤、鎮痛剤ともに点滴で入れることが出来ます。血圧が下がったり、呼吸が弱くなったりすることがあるため、使い過ぎないように注意が必要です。

特に高齢の患者様や、普段から血圧が低い患者様は、鎮静剤、鎮痛剤の使用によって、血圧が下がり過ぎたり、呼吸が弱くなったりするリスクが比較的高くなるため、使用しにくい場合があります。


注意点として、薬を用いた場合は、検査後、薬の効果が切れるまで休んでから帰る必要があります。また、病院からの帰宅の際、車やバイクなどの運転は控えていただく必要があります

鎮静剤、鎮痛剤を使用することで、楽に大腸カメラを受けることが出来ます。

まとめ

大腸カメラにおける痛みの原因、痛みの対処法について説明して来ました。

痛みに対する対処法は、医療機関によって様々です。

この記事でも述べた通り、大腸カメラの挿入法、炭酸ガス発生装置の有無は、大腸カメラを痛みなく行うためには重要なポイントです。

ホームページなどで公開している施設も増えて来ているため、ご不安な場合は確認されると良いでしょう。

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