胃の検査を受ける際、胃カメラとバリウムのどちらが良いか、よく分からない患者様は多いと思います。
しかし、結論から言いますと、バリウムより胃カメラを受けられることをお勧めいたします。
この記事では、日常的に胃カメラ、胃がんなどの内視鏡治療を数多く行ってきた専門医の立場から、バリウムと胃カメラの違いを解説し、胃カメラを受けるべき理由をお伝えしていきます。
バリウムで胃の異常を調べる仕組み
バリウムは、造影剤の一種で、レントゲンで白く写し出されます。このバリウムを口から飲み込んで、胃の中に溜めると、バリウムで染まった胃がレントゲンで映し出されるという仕組みです。
盛り上がった病変は、バリウムをはじいて写ります。例としては、隆起型の胃がん、胃ポリープなどがあります。
凹んだ病変は、バリウムが凹んだところに溜まって見えます。例としては、胃潰瘍、凹んでいるタイプの胃がんなどがあります。
バリウムの欠点
バリウムの欠点として、バリウムのはじき・溜まりで病変を発見するという原理上、凹凸がない病変(平坦な病変)は見落とされやすいという点が挙げられます。
また、レントゲンを使用して検査をするため、放射線の被ばくがあります。
さらに、バリウムで異常を指摘された際は、一般的に胃カメラでの精密検査を勧められることになります。そのため、患者様によっては、最初から胃カメラを受けておけば良かったということになりかねません。
胃カメラで胃の異常を調べる仕組み
胃カメラは、直接、胃の中を観察することが出来ます。染まり方で間接的に病変を観察するバリウムとの違いです。
凹凸が乏しい平坦な病変であっても、胃カメラでは発見出来る可能性が高まります。
病変の色調を観察することが出来るため、色調の変化でしか存在に気付けないような病変を発見することが出来ます。
また、胃がんなどの異常が疑われる病変があった場合、その場で組織を採取(生検)し、顕微鏡の検査(病理検査)で良性、悪性を確かめることが出来ます。
胃カメラの欠点
通常、胃カメラは口から入れて、のどを通して胃の中へ入れていくため、胃カメラがのどを通るときに反射でオエッとなり、辛さを訴えられる方は確かにいます。
私も口から入れる胃カメラを受けたことがあるため、この辛さは理解しております。胃カメラの検査時間は、一般的に5~10分ですが、自分が胃カメラを受けた際は実際の時間以上に長く感じました。
このように、普通に受けると胃カメラは大変な検査ですが、胃カメラを楽に受けるための方法が2つあります。
胃カメラを楽に受ける方法①:鎮静剤の使用
胃カメラを受ける際、点滴で鎮静剤を投与することで、ウトウトした半分眠ったような状態で胃カメラを受けることが出来ます。鎮静剤を投与することで、「気が付いたら胃カメラが終わっていた!」と言われる患者様は多いです。
注意点としては、高齢の患者様、血圧が低い患者様などは、鎮静剤を投与することで血圧が下がり過ぎてしまうなどのリスクがあるため、鎮静剤を投与出来ない場合があることです。鎮静剤を投与出来るとしても、患者様の状態によっては、十分な量の鎮静剤を投与出来ないため、鎮静剤を使用していない状態とほとんど変わらない意識状態で胃カメラを受けていただく場合もあります。
鎮静剤を使用できるかどうか不安な患者様は、胃カメラの前に、担当医、看護師に確認されると良いでしょう。
胃カメラを楽に受ける方法②:経鼻内視鏡(鼻から入れる胃カメラ)
通常、胃カメラは口から飲み込むものですが、最近は鼻から入れることが出来る細い胃カメラ(経鼻内視鏡)もあります。
経鼻内視鏡は、口から入れる胃カメラと違い、オエッとなる反射を起こす場所を通りません。そのため、口から入れる胃カメラより楽に受けられることが多いです。
欠点として、鼻の中が狭い方は胃カメラが通るときに痛みが出たり、鼻出血(はなじ)が出ることがあることです。鼻の中の状態によっては、経鼻内視鏡を挿入することが出来ない場合があります。
また、口から入れる胃カメラよりも、一般的に解像度は落ちます。そのため、病変の発見率に影響が出る可能性はあるかもしれません。また、拡大機能は一般的に搭載されていないため、精密検査には向きません。
それでも、内視鏡の進歩は著しく、最近では口から入れる胃カメラに負けないくらい解像度の良い経鼻内視鏡も出て来ています。鎮静剤を使用出来ない患者様は経鼻内視鏡を選ぶことで、胃カメラを楽に受けることが出来るでしょう。
バリウムよりも胃カメラを受けるべき3つの理由
バリウムと胃カメラの長所・短所をまとめます。
上の表を見てお分かりのように、以下の3つの理由から、基本的にバリウムよりも胃カメラをお勧めします。
- バリウムでは発見できない病変も、胃カメラでは発見出来る可能性があること
- 胃カメラでは、検査中に組織検査(生検)が出来ること
- バリウムで異常があった場合、胃カメラで精密検査を受けなければならないこと
特に症状がなくても、定期的な胃カメラをお勧めします
“がん”を初期の段階で発見するのであれば、おなかの痛みや食欲がないなどの症状がなくても、定期的に胃カメラを受けた方が良いでしょう。
胃カメラでは、胃だけに限らず、食道、十二指腸も観察することが出来ますが、どの部位においても、初期のがんはほとんど症状がありません。
症状が出てから胃カメラを受けた場合、既にがんが進行して、転移などの問題を起こしている可能性もあることに注意が必要です。
なお、ピロリ菌がいる方、ピロリ菌の除菌治療を受けた方は、胃がんのリスクが比較的高いため、基本的に1年に1回の胃カメラをお勧めしています。これくらいの頻度で胃カメラを受けて頂いていれば、胃がんが出来ても初期の段階で見つけることが出来ます。初期の段階であれば、内視鏡で“がん”を切除して治すことが出来ます(おなかを切らないですみます)。
胃カメラの検査費用の目安
1割負担 | 3割負担 | |
胃カメラ | 約2000円 | 約5000円 |
胃カメラ+病理検査 | 約3500円 | 約10000円 |
※他の検査を追加された際は、別途費用が必要になります。また、保険点数の改訂などにより多少の変動がありますので、あくまでも目安とお考え下さい。
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