風邪と言えば咳や痰などの症状を思い浮かべる方が多いと思いますが、嘔吐や下痢などのおなかの症状が主である風邪もあります。
これは一般的に「おなかの風邪」と言われ、医学的には「感染性胃腸炎」と呼ばれます。
このページでは、おなかの風邪「感染性胃腸炎」についてご説明します。
感染性胃腸炎の原因は?
感染性胃腸炎はウイルスや細菌などの病原体が体の中に入り、胃腸に炎症を起こすことで発症します。
食べ物が洗浄や加熱がされていないとウイルスや細菌などが体内に入り込みやすくなります。
また、感染している人に接触したり、吐物に触れたりした後に手を十分洗っていないと、その後の食事の際などに手を介して口の中に入ってしまいます。
一般的に、冬はウイルス、夏は細菌が原因になることが多いです。
代表的なウイルス、細菌をご紹介します。
・ノロウイルス(潜伏期間3~40時間):牡蠣などの二枚貝など
・ロタウイルス(潜伏期間2~3日):便を介しての接触感染
- カンピロバクター(潜伏期間2~10日):加熱不十分な鶏肉、焼き肉、牛レバー刺しなど
- サルモネラ菌(潜伏期間8~48時間):卵、鶏肉、牛レバー刺しなど
- 腸管出血性大腸菌(潜伏期間2~8日):野菜、加熱不十分な牛肉など
感染性胃腸炎の経過
ウイルスによる場合は、水様下痢で何度もトイレに行き、吐き気や嘔吐も起こることが多いです。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎では多くの場合、嘔吐は1日でおさまり、下痢は2~3日で治まります(個人差があります)。
熱が出ることもありますが、長くても2日以内に治まることが多いです。
他の感染性胃腸炎もたいていは数日、長くとも1週間くらいで治ることが多いですが、症状が強くなったり、長引く場合は病院に行きましょう。
また、自己診断で感染性胃腸炎と思っていても実は他の病気の場合もあり、注意が必要です。
- 経験したことがないような激しい下痢、腹痛
- 便に血が混ざっている(血便)
- 下痢以外に吐き気や嘔吐、発熱がある
- 排便後も腹痛が続く
- 症状が悪化している
- 症状が改善する気配がない
- 同じものを食べた人も同時に下痢になった
- 脱水症状(尿が少ない、出ない、口が異常に渇くなど)がある
- 小さな子供、高齢者、持病(心臓病や糖尿病、腎臓病など)がある人
感染性胃腸炎の治療
おなかの風邪(感染性胃腸炎)は、水分補給をして消化に良い食べ物を摂って、無理をせず安静にしていれば自然に治ることが多いです。
下痢止めなどの薬を使うかどうかは、自己判断ではなく医師と相談して決めましょう。
ここでは、生活上の注意点と薬での治療について解説します。
水分補給をする
下痢が続くときは体から水分が抜けてしまうため、脱水症状に注意が必要です。
こまめな水分補給が重要です。経口補水液が最も効率的に水分を吸収できますが、スポーツ飲料でも代用ができます(スポーツ飲料は糖分を多めに含んでいるので、大量に飲むときは水で薄め、塩を少し溶かして飲むと良いです)。
白湯や麦茶など(カフェインが含まれない飲料)でもいいですが、梅干や塩飴などで塩分と糖分を補給しながら飲むと良いでしょう。
消化に良い食べ物を摂る
「胃腸を休める」ことが重要です。
胃腸に刺激を与えるような、冷たいもの、辛いもの、脂肪分の多いもの、消化しにくいもの(玄米、海藻など)は控えましょう。
コーヒーや炭酸飲料、アルコール類も良くありません。
おかゆ、野菜スープ、煮込みうどん、すりおろしリンゴ、アイスクリーム(脂肪分の少ないもの)など、胃腸にやさしい食事で粘膜の炎症を悪化させないようにします。
薬による治療は医師にご相談下さい
下痢の症状がつらいときは、つい市販の下痢止め(止瀉薬)を使いたくなってしまいます。
しかし、下痢止めを使うことでかえって症状が悪化する可能性があります。下痢止めを使用するかどうかは医師に相談してから決めましょう。
病院では、腸の働きを整える薬(整腸薬)、便の水分を吸い取る薬、腸への刺激を抑える薬などが、病気の状態によって処方されます。
まとめ
おなかの風邪(感染性胃腸炎)の症状、原因、経過、治療について説明しました。
感染性胃腸炎は、一般的に数日で治ることが多いです。
しかし、腸管出血性大腸菌(O157)などが原因で、重症になるケースもあります。
下痢が長引いたり、血便や激しい腹痛が認められたり、症状が悪化してきたりするようなことがあれば、我慢せず早めに病院に行きましょう。
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