
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)には、
・従来の送気下ESD(CESD)
・浸水下で行うUnderwater ESD(UESD)
があります。
近年は、UESDの有用性を示す研究が増えており、
「UESDの方が優れているのではないか?」
と考える方も多いかもしれません。
しかし、UESDとCESDはいつでも切り替えが出来るため、実際の臨床現場では、単純にどちらか一方を選ぶものではありません。
例えば、
・基本はUESDで進めて、やりにくくなればCESDに戻す
・最初はCESDで、見えにくい部分だけUESDに切り替える
といった使い分けは、ごく自然に行われています。
このように実臨床では、
「UESDかCESDか」という二択ではなく、
「両者をどう使い分けるか」が重要な視点になります。
では、この「UESDとCESDの使い分け」は、研究ではどのように評価されているのでしょうか。
目次
Underwater ESDは従来型ESDより優れているのか?メタ解析の結果とその解釈
2025年、Gastrointestinal Endoscopy誌に、大腸ESDにおいてUESDとCESDを比較したメタ解析が報告されました¹。
このメタ解析では、UESDは
・手技時間が短い
・剥離速度が速い
・安全性や切除率は同等
といった結果が示されました。
一見すると、「UESDの方が優れている」とも読める結果です。
ただし、この結果をそのまま受け取ってよいのかは、少し注意が必要です。
なぜなら、このメタ解析では
「UESD単独の症例」と「途中でCESDへ切り替えた症例」が区別されていない可能性があるため、
比較の前提が揃っていないからです。
実際、このメタ解析に含まれた研究の一つでは、UESD群の5.7%で
「UESDからCESDへの切り替え」が報告されています。
しかし、他の研究ではこの点が明確に記載されていません。
そのため、本メタ解析で比較されているのは、
UESD単独 vs. CESD
ではなく、
UESD単独+途中でCESDへ切り替えあり vs. CESD
になっている可能性があります。
つまり、
“途中で戦略変更できる側”と“できない側”の比較になっている可能性があります。
この比較構造には、重要な問題があります。
すなわち、
・UESD群のみ切り替えが許容されており、比較が対等でない可能性
・良好な結果が「UESDそのもの」なのか、「切り替え戦略」なのか区別できない
つまり、
UESD単独の優位性なのか、
UESD+CESDを使い分ける戦略の優位性なのかが不明確なのです。
メタ解析の限界
こうした問題意識から、私は本メタ解析にレターを投稿しました²。
著者の先生からの返答を通じて、以下の点は共有できていると考えています³。
・「UESD単独の症例」と「途中でCESDへ切り替えた症例」が区別されていない
・結論は仮説生成的であり、「UESD単独」と「使い分け戦略」を区別した前向き研究が必要
・病変と重力の関係は重要な因子となり得る
特に重要なのは、
「UESD単独」と「使い分け戦略」を区別して評価する必要があるという点です。
病変と重力の関係から見た手技の選択
では、どのようにUESDとCESDを使い分けるべきなのでしょうか。
そのヒントの一つが、病変と重力の関係です。
病変が重力側にある場合(UESDが有利)
・CESD:粘膜フラップが展開しにくい。病変周囲に液体が集まりやすく視野が悪くなりやすい。
・UESD:浮力(重力の逆方向に作用)により粘膜フラップが展開しやすい。完全な水没により良好な視野が得られる。
病変が重力側の対側にある場合(CESDが有利)
・UESD:浮力が粘膜フラップの展開を妨げる方向に作用することがある。気泡や気体が病変周囲に集まり視野が悪くなりやすい。
・CESD:重力で粘膜フラップが展開しやすい。病変周囲に液体が集まりにくいため、視野が安定しやすい。
このように、
「病変と重力の関係によって、有利な手技が入れ替わる」
可能性があります⁴。
Dual-approach ESDとは何か?戦略としてのESD
こうした背景から、私は
Dual-approach ESD
という考え方を提案しています2, 5。
これは、
UESDとCESDを意図的に切り替えることを前提とした手技戦略
です。
単なるUESD(浸水下)とCESD(送気下)の使い分けではなく、
- より有利な環境へ能動的に切り替える
- 状況に応じて最適な手技を選択する
という点が重要です。
実臨床で重要なのは、
「今この場面で、どちらが有利か」を判断すること
です。
その判断には、
- 病変と重力の関係
- 線維化の有無
- 内視鏡の操作性
など、複数の因子が関与します。
まとめ:ESDは“戦略”で考える時代へ
今回の議論から見えてくるのは、
実臨床では「UESDかCESDか」という二択では語れない
ということです。
実際、筆者は最近、UESDの総説を執筆しましたが、
病変と重力の関係などに応じてUESDとCESDを使い分けている報告(Dual-approach ESD)
が多くみられました⁵。
今後は、
- UESD
- CESD
- Dual-approach ESD
を明確に区別した研究が進むことで、
最適な使い分けがより明確になっていくことが期待されます。
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👉Underwater ESDとDual-approach ESDを区別した理由をストーリーで
👉 Underwater ESDの基本(2026年アップデート版)
👉 ESDの全体像について
参考文献
- Singh S, Mohan BP, Vinayek R, et al. Underwater versus conventional endoscopic submucosal dissection for colorectal lesions: systematic review and meta-analysis. Gastrointest Endosc 2025; 101: 551-557.e555.
- Nagata M. Challenges in interpreting outcomes of underwater endoscopic submucosal dissection when dual-approach endoscopic submucosal dissection is included. Gastrointest Endosc 2026; 103: 640.
- Singh S, Mohan BP, Adler DG. Response to: Challenges in interpreting outcomes of underwater endoscopic submucosal dissection when dual-approach endoscopic submucosal dissection is included. Gastrointest Endosc 2026; 103: 641.
- Nagata M, Namiki M, Fujikawa T, et al. Prospective randomized trial comparing conventional and underwater endoscopic submucosal dissection for superficial colorectal neoplasms. Endoscopy 2025; 57: 484-491.
- Nagata M. Underwater endoscopic submucosal dissection in the gastrointestinal tract: technical review and dual-approach endoscopic submucosal dissection. Clin Endosc 2026 (online ahead of print).
関連サイト
▶ 永田充 医師のアメブロはこちら
ピロリ菌、食道がん・胃がん・大腸がん、内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)などについて、患者さん向けに分かりやすく解説しています。
▶ 専門家向けの解説(note)はこちら
Underwater ESDなど、より専門的な内容をまとめています。


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