出典:Nagata M. Clinical Endoscopy 2026(CC BY-NC 4.0、一部改変)

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)には、

・従来の送気下ESD(CESD)
・浸水下で行うUnderwater ESD(UESD)

があります。

近年は、UESDの有用性を示す研究が増えており、
「UESDの方が優れているのではないか?」
と考える方も多いかもしれません。

しかし、UESDとCESDはいつでも切り替えが出来るため、実際の臨床現場では、単純にどちらか一方を選ぶものではありません。

例えば、
・基本はUESDで進めて、やりにくくなればCESDに戻す
・最初はCESDで、見えにくい部分だけUESDに切り替える

といった使い分けは、ごく自然に行われています。

このように実臨床では、
「UESDかCESDか」という二択ではなく、
「両者をどう使い分けるか」が重要な視点になります。

では、この「UESDとCESDの使い分け」は、研究ではどのように評価されているのでしょうか。

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Underwater ESDは従来型ESDより優れているのか?メタ解析の結果とその解釈

2025年、Gastrointestinal Endoscopy誌に、大腸ESDにおいてUESDとCESDを比較したメタ解析が報告されました¹。

このメタ解析では、UESDは

・手技時間が短い
・剥離速度が速い
・安全性や切除率は同等

といった結果が示されました。

一見すると、「UESDの方が優れている」とも読める結果です。

ただし、この結果をそのまま受け取ってよいのかは、少し注意が必要です。

なぜなら、このメタ解析では

「UESD単独の症例」と「途中でCESDへ切り替えた症例」が区別されていない可能性があるため、
比較の前提が揃っていないからです。

実際、このメタ解析に含まれた研究の一つでは、UESD群の5.7%で
「UESDからCESDへの切り替え」が報告されています。

しかし、他の研究ではこの点が明確に記載されていません。

そのため、本メタ解析で比較されているのは、

UESD単独 vs. CESD

ではなく、

UESD単独+途中でCESDへ切り替えあり vs. CESD

になっている可能性があります。

つまり、

“途中で戦略変更できる側”と“できない側”の比較になっている可能性があります。

この比較構造には、重要な問題があります。

すなわち、

・UESD群のみ切り替えが許容されており、比較が対等でない可能性

・良好な結果が「UESDそのもの」なのか、「切り替え戦略」なのか区別できない

つまり、

UESD単独の優位性なのか、
UESD+CESDを使い分ける戦略の優位性なのかが不明確なのです。

メタ解析の限界

こうした問題意識から、私は本メタ解析にレターを投稿しました²。

著者の先生からの返答を通じて、以下の点は共有できていると考えています³。

「UESD単独の症例」と「途中でCESDへ切り替えた症例」が区別されていない

結論は仮説生成的であり、「UESD単独」と「使い分け戦略」を区別した前向き研究が必要

病変と重力の関係は重要な因子となり得る

特に重要なのは、
「UESD単独」と「使い分け戦略」を区別して評価する必要があるという点です。

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病変と重力の関係から見た手技の選択

では、どのようにUESDとCESDを使い分けるべきなのでしょうか。

そのヒントの一つが、病変と重力の関係です。

病変が重力側にある場合(UESDが有利)
・CESD:粘膜フラップが展開しにくい。病変周囲に液体が集まりやすく視野が悪くなりやすい。
・UESD:浮力(重力の逆方向に作用)により粘膜フラップが展開しやすい。完全な水没により良好な視野が得られる。

病変が重力側の対側にある場合(CESDが有利)
・UESD:浮力が粘膜フラップの展開を妨げる方向に作用することがある。気泡や気体が病変周囲に集まり視野が悪くなりやすい。
・CESD:重力で粘膜フラップが展開しやすい。病変周囲に液体が集まりにくいため、視野が安定しやすい。

このように、

「病変と重力の関係によって、有利な手技が入れ替わる」

可能性があります⁴。

Dual-approach ESDとは何か?戦略としてのESD

こうした背景から、私は

Dual-approach ESD

という考え方を提案しています2, 5

これは、

UESDとCESDを意図的に切り替えることを前提とした手技戦略

です。

単なるUESD(浸水下)とCESD(送気下)の使い分けではなく、

  • より有利な環境へ能動的に切り替える
  • 状況に応じて最適な手技を選択する

という点が重要です。

実臨床で重要なのは、

「今この場面で、どちらが有利か」を判断すること

です。

その判断には、

  • 病変と重力の関係
  • 線維化の有無
  • 内視鏡の操作性

など、複数の因子が関与します。

まとめ:ESDは“戦略”で考える時代へ

今回の議論から見えてくるのは、

実臨床では「UESDかCESDか」という二択では語れない

ということです。

実際、筆者は最近、UESDの総説を執筆しましたが、

病変と重力の関係などに応じてUESDとCESDを使い分けている報告(Dual-approach ESD)

が多くみられました⁵。

今後は、

  • UESD
  • CESD
  • Dual-approach ESD

を明確に区別した研究が進むことで、

最適な使い分けがより明確になっていくことが期待されます。

関連記事

👉 本記事をUnderwater ESDの定義問題に関して深堀り(ESDの専門医向け)

👉Underwater ESDとDual-approach ESDを区別した理由をストーリーで

👉 Underwater ESDの基本(2026年アップデート版)

👉 ESDの全体像について

参考文献

  1. Singh S, Mohan BP, Vinayek R, et al. Underwater versus conventional endoscopic submucosal dissection for colorectal lesions: systematic review and meta-analysis. Gastrointest Endosc 2025; 101: 551-557.e555.
  2. Nagata M. Challenges in interpreting outcomes of underwater endoscopic submucosal dissection when dual-approach endoscopic submucosal dissection is included. Gastrointest Endosc 2026; 103: 640.
  3. Singh S, Mohan BP, Adler DG. Response to: Challenges in interpreting outcomes of underwater endoscopic submucosal dissection when dual-approach endoscopic submucosal dissection is included. Gastrointest Endosc 2026; 103: 641.
  4. Nagata M, Namiki M, Fujikawa T, et al. Prospective randomized trial comparing conventional and underwater endoscopic submucosal dissection for superficial colorectal neoplasms. Endoscopy 2025; 57: 484-491.
  5. Nagata M. Underwater endoscopic submucosal dissection in the gastrointestinal tract: technical review and dual-approach endoscopic submucosal dissection. Clin Endosc 2026 (online ahead of print).

関連サイト

▶ 永田充 医師のアメブロはこちら
ピロリ菌、食道がん・胃がん・大腸がん、内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)などについて、患者さん向けに分かりやすく解説しています。

▶ 専門家向けの解説(note)はこちら
Underwater ESDなど、より専門的な内容をまとめています。

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